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きょうのエスキス

一級建築士の学科試験に向けて奮闘中。静かにじんわりと、日々の振り返り。自分のための。B面。

モバイルハウスのつくりかた

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家や仕事を持つことに、「そこにずっといなければいけない」という重々しさがありました。地域で暮らすにしても、定住しなければならないし、働くにしても、副業することは基本的に許されません。多拠点生活、すなわち「移動」が自由にできないのです。そのようなことから、坂口恭平さんの移動できる家、モバイルハウスに興味を持つのは必然でした。

「なぜ、人間の生活に欠かせないはずの『家』を手に入れることが、こんなにも困難なのか。憲法によって、国民には『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』が保障されているはずなのに…家には相当なお金がかかる。」と坂口さんは思ったそうです。モバイルハウスに行き着いたきっかけは、「行政に追い出されたら、リアカーに家を載せて生活したい。」と総工費0の『0円ハウス』に住む路上生活者から聞いたことだったそうです。地面に固定されていない「家」ならば、土地を買う必要はなく、車輪の付いた建物は家ではなく車両扱い。10平方メートル以内の建築物であれば、確認申請する必要もないと。しかも、床上げされていることで、雨で湿気ることもありません。いい事づくしです。

この作品では、多摩川の河川敷で、自給自足生活をしているおじさんの助けを借りて、モバイルハウスを作る模様が、事細かに映し出されています。板や車輪、釘、金具などの材料は、ホームセンターで手に入るものとし、購入金額は2万6千円。デスクと折りたたみ式のベッドも手作り。屋根は透明の波板で、窓2つも廃棄されていたガラスを使って作られ、完成。2畳間の「家」は、まるで方丈記の世界観です。そして、吉祥寺の駐車場を月額2万3千円で借り、「家」を置くことにしました。さっそくピザを頼むと、ちゃんと届きました。すごい!!

インフラですが、『0円ハウス』の住人たちを参考にし、小型のソーラーパネルを1万円で購入。天井の下に取り付け、自動車用のバッテリーで発電した電気を貯めると、パソコンやラジオなどは使用可能に。洗濯はコインランドリーへ。水道やトイレは公園やコンビニを利用。ガスはカセットコンロを使います。エアコンは使えないのですが、冬は天井から射してくる太陽光で温かくなるそうです。一方、真夏は暑すぎて中にいられないんだそうです。そんなときは思い切って、図書館やカフェに行って仕事をするんだそうです。

予想をはるかに超えていました。既成概念を塗り替える、とんでもない建築家が現れました!作品の所々に出てくるエピソードからしても、学生時代からぶっ飛んでいます。早稲田大学建築学科の石山修武研究室出身ですが、「都市の再生」がテーマで、既存の建物を選んで、それを改築、増築するという課題で… 廃墟となったマンションの貯水タンクに、坂口さんは目をつけます。そして、そのタンクを改築せずに、水と食料と発電機を持ち込み、「ここにただ住む」というパフォーマンスをビデオカメラで撮影。図面や模型ではなく、その映像を課題として提出したのです。全編を通して、小さい頃の巣作り体験から建築を志した、坂口さんらしさが全開でした。モバイルハウスは、自分とモノやお金との関係を問い直す、実験装置みたいなものだと。都市と私たちの生活を結びつける「共有空間」の新しい捉え方を提示した作品でした。ユーモアは社会を変える。人生はおもしろい。