きょうのエスキス

一級建築士試験の合格を目指して奮闘中。静かにじんわりと、日々の振り返り。自分のための。B面。

世界は一冊の本

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「いきなりこんなふうになったわけじゃないんやで。みんなのように、小学生時代もあったんやで。」塾にいると、こういう場面によく遭遇します。たいていは私と同世代の先生方で、その背中には哀愁すら漂っています。今日は、図工を教える大学生の方も来ていて、その存在だけで教室が明るく、鮮やかになるというか…眩しいくらいです。「塾生さんとたった7歳ほどしか離れてないんやね。私にもそういう時代あったわ。あはは。」非常勤の音楽の先生が軽快に笑いながら、こちらを振り返り、大きくうなづく私。どちらかというと、ふっくらしてた昔よりも、スッキリして、笑い皺のある今のほうが好きなので、年を重ねることをすんなりと受け入れられるのかもしれないです。学生時代から社会人2年目までは外見も内面もコンプレックスだらけで、相当悩みましたから。ストレスで食べては、現実逃避の負のスパイラル。張り合うことを諦めざるを得ない状況でした。私にとっては、早いうちに、美に対して執着がなくなったのは、むしろラッキーだったなぁ… そんなことを思いつつ、コントラストな風景を味わい愛でていました。

また、事務をする傍ら、今週ついに小1の塾生さんと初対面。さっそく国語の文章問題を解いてもらうことになりました。担当の先生から音読が基本だとアドバイスをいただき、声に出して読んでもらうと、すごい!!「あっ」とこちらにニッコリ笑いかけると、消しゴムを握りしめ、左右に勢いよく動かし始めました。そして、大きな文字ではっきりと正答を書いたのです。たとえ間違いがあったとしても、塾生さんの気づきや感性を大切に、サポートできればと思いました。そんな感じで、順調に解き始めたのですが、次第に塾生さんの集中力が切れてきて、初回は途中でギブアップ。担当の先生がいい頃合いを見て、入ってきてくれました。「どうして主人公はこのような行動をとったのかな?」「主人公はどんな気持ちだと思う?」やはり、先生の言葉かけや質問には、グイグイ引き込まれている様子で、自分なりに考えている塾生さん。とても勉強になりました。また、友人で塾の教室長をしている久美さんにも、授業報告をすると「小1ですか… 私は中高生以上が専門なので、何とも意識の仕方がまた違うでしょうね。音読も大事。というか音読が根底で他を支える感じだと思ってます。全てのプロセスを楽しんでくださいね。」と返ってきました。

そんなタイミングで、偶然にも、この詩に出合いました。長田弘さんの『世界は一冊の本』です。

本を読もう。
もっと本を読もう。
もっともっと本を読もう。
 
書かれた文字だけが本ではない。
日の光、星の瞬き、鳥の声、
川の音だって、本なのだ。
 
ブナの林の静けさも
ハナミズキの白い花々も、
おおきな孤独なケヤキの木も、本だ。
 
本でないものはない。
世界というのは開かれた本で、
その本は見えない言葉で書かれている。
 
ウルムチ、メッシナ、トンプクトゥ、
地図のうえの一点でしかない
遙かな国々の遙かな街々も、本だ。
 
そこに住む人びとの本が、街だ。
自由な雑踏が、本だ。
夜の窓の明かりの一つ一つが、本だ。
 
シカゴの先物市場の数字も、本だ。
ネフド砂漠の砂あらしも、本だ。
マヤの雨の神の閉じた二つの眼も、本だ。
 
人生という本を、人は胸に抱いている。
一個の人間は一冊の本なのだ。
記憶をなくした老人の表情も、本だ。
 
草原、雲、そして風。
黙って死んでゆくガゼルもヌーも、本だ。
権威をもたない尊厳が、すべてだ。
 
2000億光年のなかの小さな星。
どんなことでもない。生きるとは、
考えることができると言うことだ。
 
本を読もう。
もっと本を読もう。
もっともっと本を読もう。


人生はおもしろい。