きょうのエスキス

H29一級建築士製図試験を終えて、また一歩踏み出します。じんわりと日々の振り返り。

「真理先生」の美しさ

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私がプレゼントしたい本は「真理先生」です。思いついた時にいつでも手渡せるよう、何冊か持っておこうかと考えています。8年ほど前に初めて読んだのですが、この本にふれ、どこか救われた気持ちになりました。そして、この作品の世界観を、自分のなかに取り入れて、生きてみたいと思うようになりました。文庫本の巻末の解説に、「真理先生」の魅力が描かれてありますので、抜粋したいと思います。  

「今日の小説には暗い世相を描いたものが実に多い。人生を否定的にみた作品が多い。人生の時代の実相をみれば、そのとおりかもしれないが、それだけに逆に人生の美しさ、人間の善意を大胆に表明したものがあらわれていいはずである。「真理先生」はそういう作品の典型であり、むろん武者小路実篤の辿ってきた道の一極点としてあらわれたものである。… 作者は時代と人生の暗さに無頓着なのではない。眼をそらしているのではない。逆に幾たびも否定的な思いを味わったあげく、いわばその暗さを土壌とし、それに育てられつつ突き抜けて、人生の大肯定に達しようとした、そういう達人の眼を、私はこの作品の根底に感じるのである。… 「真理先生」に登場する人物はすべて善人である。そして変り者の画家や書家たちである。変り者というのは世間からみればそうなのであって、実はここに現代の一番健康な人間がいるのではないかと、作者は問うている。… 彼らはみなそれぞれに自分の生命をのばすことを心がけ、他の仕事を尊敬し、それが結局人間愛にむすびついていることが自然にわかる。… 善人とはお人好しの意味ではない。自分の理想や信念に、あくまで忠実な努力家のことである。」

この話に登場する真理先生、馬鹿一、白雲、泰山… それぞれの現実離れした純粋さ、繊細さ、正直さ、そして不器用さ、不完全さが何よりも魅力的だと感じたのです。これは大きな気づきでした。実際に、そういう雰囲気を持っている人に出会うと、なぜだかとても安心します。また、ひとをカテゴライズすると、ひとを見る眼は養われないんだなと考えさせられました。文章が明快で、読みやすいので、日曜の夜にもぴったりな一冊です。