きょうのエスキス

一級建築士試験、R2学科復活合格。製図が鬼門。R3は自分に負けない年にする!じんわり日々の振り返り。

おやじの会

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「弱さのハラスメント」を書いていたとき、社会のパワーバランスを考えると、父性をもっと大切にした方がよいのではと思うようになりました。これまでのヒアリングメモを整理していたら、そのなかに大きなヒントがありました。もう6年以上前の話になりますが、当時 一新塾のメンバーから「おやじの会」のことを聞き、会長さんに会いに行くことに。会長の上甲さん(現在は市議会議員⇨http://mac-joe.net/)は、仕事も子育ても全力でやっておられ、活き活きとされていました。どうしたら面白いか、まるで少年のように、子どもの目線で考えられているなぁと当時感じていました。改めて読み直してみると、あの時熱い思いが伝わってきて、こころを揺さぶられたのは… 真のしごとは頭だけではなく、いつも全身で行われるものなんじゃないかと。上甲さんはそれを体現されていたのだなぁと。みなさんはどのように感じるでしょうか?

(ここからはかなりの長文になりますので、時間のある時にゆっくりとご覧ください。)

日時:2010年1月28日  19:00~20:15 
話し手:「おやじの会」会長  上甲 誠さん 
場所:阪南市立舞小学校 

おやじの会とは? 
PTA活動=「お母さん中心」ではない「おやじ」の活動。 各地域で広がってきているが、泉州ではここだけ。 

できたきっかけは? 
小学校の周辺は40年前に開発。南海団地ができ、子育て世帯が増え、舞小学校もできた。当時は第二次ベビーブームで、マンモス校。 (現在は、生徒数も1/6に激減。空き教室が増えている)  当時の会長さん一家も、周辺に引っ越し、会長さんも舞小学校に通う。 開発により、山が切り開かれてできた学校の広大なグランド内に、小5のとき、 PTAや教育委員会から2,300万円の寄付で、アスレチック場ができる。 会長さんはずっと地元に残っている。現在3児のパパで、子どもたちも舞小学校へ。 当時自慢だったアスレチック場が子どもが行き出して、1/5に縮小したことを知る。 そこで、教育委員会に行くと、撤去するお金は出すが、修理・ペンキ代は出さないし、 一切管理はしないと聞いた。さらに、3年前に子供から最後の遊具もなくなると聞く。 校長先生・PTA・学校に交渉してもダメ。ならば、有志で保全活動していこうと  教育委員会にアプローチ。「おやじの会」が設立された。 もともと、団体・ボランティア活動や吹奏楽が好きで、今までの交友関係もあり、 立ち上げは容易だった。 

趣旨・理念は? 
「 親も楽しもう!」保全活動と飲み会。できないことは無理しない。子どもが楽しく  健康に遊べたら。危ないところは子どもには行かせず、行けるところはペンキを塗ったり、親子のつながりの場に。 

やってみて気づいたこと 
意識の高い人が少ない。ボランティアはお金をかけずに、志が大事。「おやじ」の会は、どんなことがあっても3年は続ける。たいていは何でも1、2年後に形骸化し、人が減る。興味もなくなり、継続が難しくなる。また、がんばれば頑張るほど、文句を言いだす人、批判したり、あげ足を取るなど横目で見る人が出てくる。今までに、本業(建築)の仕事のためにやっているのではという人もいた。これでは、みんなの士気も下がり、元気がなくなる。そこが難しい。恨んでる人は何を見ても腹が立つ。それではダメだ。「おやじの会」のメンバーも当初40人だったが、人数が増えると、派閥が出てきた。賛同する人は残り、文句を言うメンバーは自然と消え、現在は10人前後。参加者の職業は自営業が多い。また、サラリーマンで仕事が忙しく、参加できない人のなかにも意識の高い人はいる。興味さえ持ってもらえればOK。 自分は長男が小1のときにサラリーマンから独立。前から話は持ち上がっていたが、仕事が軌道に乗るまではできなかった。が、3年で何か新しいことをしようと思っていた。 立ち上げるのにはマンパワーが必要だが、昔子ども会の会長をしたときに、自ら手を挙げて組織つくりをすることが好きなことに気づき、「おやじの会」の立ち上げにあたっても、宣伝をして、PTAにも呼んでもらった。会をよくしたいのに、「おれはイヤ」とウダウダいう空気感が嫌いである。 

活動を通して、周囲は変わったか? 
家のなかでは、昔からワイワイ面白いことをしていたので、自分の息子は今までとはあまり変わりはない。しかし、メンバーで自営業の人たちは変わった。地域の防災、コミュニケーションがとれる。「おやじの会」で出店を開いたり、おじいちゃん家に来る変な営業の人に対しても、子供たちに対しても、うろちょろしてたら安全だ。 

保全以外の活動は? 
①子どもたちとハイキング 
今のところは、舞小学校の生徒が対象。父同伴で参加することが条件。わりと長距離で、参加者は20人強。特に炊き出しは、メンバーのコックさんがおいしい豚汁を出してくれて好評。 
②地域のまつりに参加 
NPOの手伝い、「おやじの会」かプライベートか分からない。協力的にやる人は決まっていて、どこに行っても会うメンバーが同じで、地域の核を担っている。 

活動において必要なことは? 
主体的に関わっていけるシステム→もっと学校と密にコミュニケーションを取ることが必要
モンスターピアレンツは、はけ口がないから。火がつく前に話が聞けたら、窓口(架け橋)になれたらよいと思う。一回目の切り口として、懇親会に先生に来てもらったが、実現するのがなかなかだった。今は先生もサラリーマンと同じで、何をするにも、校長先生がシャットアウト。昔は、もっと先生が親・生徒と関わりを持とうとしていたと思う。先生の家に遊びに行ったり、日曜日に泊まったりしていた。しかし、今は校長の顔色をうかがいながら。しかし、来てみたら、「キャンプをしよう」と盛り上がる。「おやじ」だけでなく、「おかん」も来たら。今の「おやじの会」のメンバーは、女性は会計担当の1人だけ。もともと教育者で悪いのはひとつかみ。親がうるさいので、先生は一人ひとりにおこれない。子どもは怒られたことが、後で思い出となって心に残るもの。先生の個性が出せず、みんな同じで、先生はかわいそう。何とか先生たちを「おやじの会」でバックアップできたら。PTAに相談できないし、PTA予算にも付いていない。その点「おやじの会」は自由がきく。自分たちでお金集めもできる。昔は家長制度、今は学校主体。 

地域事情は? 
この地域は、いい側面があるのに、このままほったらかしにしてたら、廃墟となってしまう。市からお金が出ない。『なら地域で楽しもう。活気のある地域になるよう、盛り上げていこう』と「おやじの会」は考えている。新興住宅地であるスカイタウンができ、ここの30年前のように、子供が増えているが、他の地域は高齢化が進んでいる。財政難で、市の病院もつぶれてしまった。 一方スカイタウンのPTAはとても元気。クリスマスコンサートでは、バンドも結成していた。 この地域は、やぐらだんじりがないので、組織つくりは大変だ。岸和田はだんじりが起爆剤になっていると思う。しかし、全体的に阪南市は、海・山など自然に恵まれ、農業・漁業があり、住みやすいまちだと思う。

地域とつながる「おやじの会」の課題 
①ボランティア だと言うと、地域住民をとりこみにくい。 
ボランティアとしてよりも、思い出づくりとしての方がみんなも参加しやすい?「おやじの会」の活動は女性の方が関心を持っている。子ども時代に親と遊んでいない人は、興味を持たない。親教育、18歳を超えたら教育するのは難しいと思う。 阪南で、おじいちゃんの「おやじの会」が広がればと考えている。おじいちゃんと子どもたちの交流を。ふだん私たちの活動は、ボランティアとは言わず、ただ遊んでいると伝えている。なじみやすいように。しかし、メンバーとして入ってもらっても、サラリーマンで定年退職したおじいちゃんは、価値観の違いで、地域のボランティアとなじめなかったり、理解できなかったりする人も多い。サラリーマンのときは、成果主義だったからだと思う。私たちの活動は目に見えないところが価値基準。会社にいても、ボランティアのことを学んでいないと思われる。 
育児支援は親のため、子供の視点がない。 
ここは子どものためのアスレチックの保全活動。地域に22年ボランティア活動をしている大先輩からのアドバイス、「子ども3人集めたら、勝手に遊ぶ」。おじいちゃんと一緒に遊具に乗る。「けがしたら、どうする?」と親は言うが。とにかく集めるきっかけをいっぱい作ろう! 何をしても親の視点ばかり。子どもに聞かせたくないニュースをマスコミは流すのは、子供の教育に悪いし、日本をダメにしている。面白おかしくした方が、観る人が多いが・・・。 
③「おやじの会」の活動を負担にならないようにする。 
④先生が心を開けるような仕組みづくり
今の先生は、聖職だと思っておらず、あくまでも仕事だという認識。 もともとは、金八先生気質の人も、入ってみたらギャップがあり・・・ 

情報発信は? 
子供を通じてプリントを渡している。が、子どもが持って帰って来ない場合があるので、ホームページにも載せている。プリントは、母親は読むが、父親はあまり読まない。子どもを巻き込むために、「アスレチックに植えてほしい木は?」「その木を選んだ理由は?」というプリントを提出させたが、親と子のコミュニケーションのきっかけづくりになっている。 

昔から育児に興味はあるか? 
父親も自営業で、必ず晩ごはんは、家族全員で食べていた。よく子どもを見ているだけで安心できる。怒るときは引きずり回す。悪いことをしたそのときに怒らないと。後で怒っても、子どもは納得しない。一本釣りのタイミングと同じ。子どもとできるだけ長い時間を過ごすようにしている。サラリーマンのように夜11時に帰って来る父親よりも勝っていると思う。私たち高度成長期の子どもは、父子で過ごす時間が少なく、思い出がない人が多い。思い出がある人は、地域を愛して離れないか、もしくは離れても地域に対する思いを持っていると思う。地域での思い出作りが、地域の活性化にもつながる。子どもには仕事の話もするようにしている。子どもと話すことは何よりも楽しい。 

家庭での育児の分担は? 
子どもの風呂は絶対入れる。奥さんにはさせないから、頭の洗い方も分からないのではないか。ふだんは、お母さんがきちんとしていても、いざという時、おやじがガツンといかなければいけない。お父さんは、土・日に瞬発的に遊ぶものだ。父・母が横にいることが大事。基本的に庶務の仕事は、子どもが寝静まってから行っている。育児放棄は、仕事が忙しすぎてできないのだと思う。今の親を変えるのは難しいが、自分の子ども以外と一緒に楽しむことはできる。志のあるものが積極的に関わっていったらよいと思う。 

今後の動きは? 
アスレチックの補修は一通り仕事を終えた。これからも、保全活動と飲み会は継続していく。今は実動する人がいない。これからも、事務作業と連絡など面倒な作業は、こちらでやっていき、アイデア出しは、他のメンバーにやってもらおうと思う。人口のバランスに合わせて、新しいものは作らない。今あるものの保全、教育を。昨年度末に写真付き冊子をPTAや教育委員会、市議会議員全員(顧問)に渡し、外堀から埋めた。学校、教育委員会の予算はないので、お金はいいから保全活動をやらせてと。それで寄付をお願いした。本当は余裕があれば、あちこち直したいが、向こうからは音沙汰がない。建築業界は今暇だから、いっぱいできるのだが。 市・組織を変えるよりも、小じんまりな地域に合ったやり方があると思う。5人集まれば、充分。自分が、極力子どもと接し、その輪を広げていく。同じようなことを、隣の小学校でやっても、立ち上がるとは限らない。また、「おじいちゃん」を巻き込み、「あたごプラザ(旧幼稚園)」を見習いたい。地元の人が運営して、各部屋を有料化しており、若い人は少ないが、お年寄りの憩いの場になっている。「おっさん」にしかできない面白いことを。